日本では近年立て続けに災害が起こり、2024年にはまさかの元日に石川県能登半島で大きな地震災害が起こりました。
大災害が起きると「政府がなんとかしてくれる」「避難所に逃げれば大丈夫」といったイメージがあるかもしれません。しかし実際には異なり、政府が行ってくれることは最低限で、避難所に入れないケースも多いのです。
水道や電気などのインフラが止まってしまった時、私たちは復旧までの時間を「自宅避難」する必要があります。ここでは、自宅避難に必要な物や、今できることなどを詳しく紹介します。
1.避難所には入れないケースも多い
日本では災害が起きたときに基本的に「避難所」が併設されます。しかしそもそも自分が住んでいる場所の避難所がどこなのか、理解している人は少ないかもしれません。しかも避難所があっても、次に紹介する理由から入れないことは多いのです。
1-1.すでにいっぱいで入れない
避難所が設置されても、人がいっぱいで入れないケースは多いです。避難所はその地域の人数に合わせて設置されるものの、下表のような理由で避難所が満杯になることがあります。
想像以上に人が集まったとき | 特に都市部や人口密集地域では、災害時に多くの人が避難するため、避難所への需要が急増する。これにより、避難所がすぐに満員になってしまう |
避難所の設備の限界 | 避難所の設備や広さには限界がある。トイレや飲料水の供給、食料の確保など、避難所で提供されるサービスも限られている。このため、収容できる人数には限りがあり、満員状態が生じやすい |
避難所へ向かうルートが被災している | 地震や豪雨災害では、そもそも避難所へ向かうことが出来ないケースも。建物や木の倒壊により避難所へのルートが絶たれてしまう |
災害ではこうした状況下に置かれることも多いため、避難所の確保だけでなく、他の避難先や自宅での避難計画も重要になります。
1-2.ペットや家庭の事情もあって入れないことも
避難所には基本的にペットは入れません。衛生や安全上の理由から、ペットを連れての受け入れは制限されます。そもそも避難所が動物アレルギーやペット同士のトラブルを防ぐため、ペットの同伴を禁止していることも多いでしょう。そのためペットを飼っている人は、避難所に入れない可能性が高いです。
また高齢者、障害のある人など、特別なケアが必要な家族がいる場合は、そのケアを優先するために避難所に入れないケースもあります。自宅でないと落ち着かない、医療機器が使えないといった場合は、自宅待機が優先されます。
1-3.自宅避難ができるケースとできないケースとは
避難所に行けない、すでに一杯で入れないといった場合、自宅避難が優先されます。しかし自宅避難をしたくてもできる場合と、できない場合があります。
自宅避難ができるケース |
自宅避難ができないケース |
自宅が安全であり、避難所よりも安全な場所である
適切な防災備蓄がある 家族やペットと一緒に過ごせる状態にある 水道など最低限のライフラインがある |
自宅が被災地域に位置し、危険が高い
自宅の建物が損壊しており、居住が危険な状態にある 災害により水道や電気などのライフラインが停止している 自宅周辺が浸水や土砂崩れなどのリスクが高い |
そもそも自宅の建物が損壊しており、居住が危険な状態にある場合、自宅避難はできません。そうしたリスクがない上に、生活できる分の水がキープされているといった場合は、自宅避難も可能でしょう。ただし建物の構造的な被害や、崩落の危険性がある場合は、他の安全な場所に避難する必要があります。
2.自宅避難のために必要な物をそろえよう
自宅が無事だった場合、避難所よりも生活用品がそろっている自宅避難のほうが何かと心強いです。自宅避難をするにはある程度の準備が必要ですが、以下のように間違った準備をする人もいます。
- いざというときのためにやたら防災グッズを買ってしまう
- 防災グッズを買っても一度も試さない
防災グッズを買っても一度も試さず、結局賞味期限や消費期限が切れてお金の無駄遣いになってしまうケースは多いです。また、一度も試したことがないために、いざというときに使い方が分からず、結局役に立たない場合もあります。そのようなことがないよう、自宅待機では基本的に日常生活で使うものを工夫したほうがいいです。
2-1.日常にあるもので何とかする
自宅避難に向けて普段から家に常備すべきものは以下の通りです。
- 1日1人あたり3リットルの水
- 3日分程度の食料
- 簡易トイレ
- モバイルバッテリー
- ラジオ
- ランタン
- 生理用品やコットン類
- トイレットペーパー
- 水のいらないシャンプーや歯磨きシート
水や食料はローリングストック(回転備蓄)という方法が適しています。例えばレトルトカレーは防災食として便利ですが、災害が起きない限り食べないという準備ではいつの間にか賞味期限が切れてしまいます。そのため普段から食べている水や食品を多めに購入し、日常で食べつつ必要な分だけ買い足すという方法が良いでしょう。
また水は1日に1人あたり3リットル以上の水を確保することが推奨されています。なるべく置き場所を確保し、水道水でも良いので空のペットボトルに備蓄させておきましょう。トイレットペーパーや生理用品も、普段使う量にプラスして備蓄しておくと安心です。
参照
あなたの自宅を最高の避難所に! 今すぐ準備したい10の備蓄品 – 記事 – 明日をまもるナビ – NHK
2-2.災害グッズを買うなら必ず試すこと
簡易トイレや卓上コンロなど、災害用品を購入したら必ず試しましょう。ちまたには多くの災害グッズが販売されており、それを日頃から準備しておくことが大切です。しかし購入して安心するだけでは意味がありません。なぜ災害グッズを購入してから試すことが重要なのか、それは次のような理由があるからです。
機能の確認が何よりも重要だから |
災害グッズは緊急時に本当に使えるか試す必要があります。購入してから一度試すことで、本当に必要な機能があるのか確認できます。例えば、簡易トイレの組み立てや使用方法を試し、実際使いやすいかどうか確認することが重要です。
使い方を覚えておくといざというときも安心だから |
災害時には緊急かつ迅速な対応が求められます。しかし、新しい機器や道具を使う際には慣れるまで時間がかかるため、購入してから試すことが重要です。例えばラジオのチャンネル設定やランタンの点灯方法を事前に練習しておくことが役立ちます。
不具合がないかチェックするため |
購入製品には不具合がある場合があります。購入してから試すことで、不良品や故障がないかを確認できます。もし不具合があれば、交換や修理などの対応が事前にできます。
災害が起きた際も事前に対応できるため |
災害時は状況が予測できず、パニックになることも多いです。購入してから試すことで、実際の状況に適応できるかどうかを確認できます。例えば、非常食の作り方や試食をしておくことで、食事の準備にも慣れることができます。
3.自宅避難で過ごすポイント
自宅避難は避難所よりもプライバシーが保たれ、普段過ごしている家だけあって、さほど困難は少ないように見えます。しかし大災害のときは電気ガス水道といったインフラ整備が止まることも多く、正しい過ごし方をしないと低体温省や脱水症状にもなりかねません。ここからは、自宅避難で快適に過ごせるポイントについて紹介します。
3-1.寒さ対策を行う
海面プレートの影響から、地震災害は冬が多いと言われています。自宅避難ができても電気やガスのインフラが通っていない場合、自宅でも低体温症やウィルス感染のリスクが高まります。そんなときでも体を温める方法があります。
方法 |
内容 |
新聞を着衣の下に着る | 複数の衣類を重ね着することで、体の表面からの熱を逃がさず、体温を保持する効果があります。新聞紙をくしゃくしゃにしたものを衣類の間に挟むと空気の層ができ、体温を逃しません |
毛布や寝袋を使用 | 毛布や寝袋を使用して体を覆い、外部の冷気から遮断します。毛布や寝袋は保温性が高く、体温を保つのに有効です。キャンプ用品として日頃から常備しておくと良いでしょう |
レッグ、ハンドウォーマーを使用 | レッグウォーマーやハンドウォーマーを使用し、手や足先を温めます。マフラーも有効で、首、手首、足首を温めると外部からの冷気を防ぐ効果があります。 |
軽い運動をする | 軽い運動を行うことで、体温を上昇させます。歩く、腕や足を振る、体を軽く揺らすなどが有効です。 |
ルームウェアを着用 | ルームウェアやパジャマなど、部屋着を着用して体を覆い、外部からの冷気を遮断します。 |
これらの方法を組み合わせ、自宅での避難時でも体を温めましょう。特に新聞紙や毛布の使用、レッグウォーマーの活用などは、寒さ対策に効果的な手段です。
参照防寒と感染対策を!冬に備えるべき防災対策│防犯・防災特集│ALSOK
3-2.ストレス解消を心がける
災害時の避難は、4日目辺りから強いストレスを感じるといいます。とくにインフラ整備が整っていない場合、スマホの充電もままならず、情報が手に入らないことからイライラすることが多いです。
家族同士が不満をぶつけることのないよう、避難中は次のことを心がけましょう。
- イライラしたときは深呼吸を心がける
- 生活リズムを崩さない
- 家族以外の人ともコミュニケーションを積極的に取る
- たまに甘いものを食べる
- ストレッチを中心に体を動かす
- トイレを我慢しない、水を積極的にとる
特にストレスを感じやすいのは、トイレを我慢する、水を飲まないといった、普段の生活とは違う行動です。生活リズムを整えるためにも普段から水や食料を用意し、簡易トイレの準備を行いましょう。
4.まとめ
従来は、災害が発生すると避難所への避難が一般的でした。しかし、近年の災害の多発やその経験から、避難所での生活が不便であったり、そもそも避難所に入れない問題が起きています。
そのため、災害時にはできるだけ自宅で避難生活をし、居住の継続ができるような環境作りが大切です。今回紹介した必要なものを普段から整え、いざ災害が起きてもストレスをためないような生活を心がけましょう。