毎年のように日本各地でおきる大地震は決して他人事ではありません 明日起こるかもしれない自分の事として考えるのが大事であり、丈夫な家は命と財産を守ります。大きな揺れが起こると家はどのようなダメージを受けるのかを想定して、間取りや家具の配置を考えてみましょう。

1.震度とマグニチュードの違い

地震が発生すると「震度」と「マグニチュード」で発表されます。両方とも数字の数が大きいほど大きな地震です。両者の違いは、震度は地震による「揺れの強さ」を表し、マグニチュードは「地震そのものの大きさ」を表しています。両方の表記についてもう少し詳しくみていきましょう。

1‐1.震度は「揺れの強さ」を表す

震度は地震の揺れの強さを表します。これは地震の被害の程度や人々が感じる揺れの強さに基づいて表現されたものです。日本の震度は気象庁が定めたものであり、日本では「震度階級」という尺度が10段階において使用されています。震度階級は1から7までの数字で表され、5と6に関しては「弱」と「強」の区別もあります。数字が大きくなるほど揺れの強さが増します。

出典:気象庁ホームページ(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/index.html

「震度とゆれの状況」(気象庁ホームページより)

1-2.マグニチュードとは「地震そのものの大きさ」を表す

その一方、マグニチュードは地震そのものの大きさを表します。これは地震のエネルギーの放出量を測定する指標であり、基本的に地震の震源の深さや地震波の測定から算出されます。ただし、国際的に統一された規格はありません。

地震とマグニチュードは、電球の明るさとその周囲の明るさの関係によく例えられます。マグニチュードは電球の明るさを示し、震度は電球から離れた場所での明るさを表します。つまり、マグニチュードが大きくても、震源から遠い場所では震度が小さくなります。マグニチュードが大きいからといって、必ずしも震度が大きいわけではありません。

参照:気象庁|震度・マグニチュード・地震情報について (jma.go.jp)

2.大きな地震が発生した場合、戸建ての家はどうなるのか

日本は残念ながら地震の多い国です。以下は、震度と戸建ての家に生じる被害の一般的な事例です。耐震補強の強い家ほど被害は少なく済みますが、そうでない家は震度が大きくなるにつれ、家屋に生じる被害も増加します。

震度被害の程度
1ほとんど被害なし。揺れが感じられる程度。
2家具の転倒や振動が感じられる。
3戸建ての一部の軽微な損傷。
4戸建ての構造に軽度の損傷が見られる。吊り下げ物は大きく揺れる
5弱食器棚や本が落ちるレベル。固定していない家具が倒れるケースも
5強固定していない家具は倒れる。ブロック塀の崩れや外壁にヒビが入るなど、戸建ての構造に損傷が生じるケースも。
6弱戸建てが損壊する可能性がある。特に耐震性の低い家は外壁や屋根が剥がれる
6強多くの戸建てが損壊する可能性がある。耐震性の低い家は建物自体が傾いたり倒壊する
7戸建ての多くが損壊している。耐震性が高くても、まれに傾くなどの被害が生じる

2-1.一階よりも二階の方が揺れは大きい

地震は、1階よりも2階の方が揺れやすいです。それには以下のような理由があるからです。

共振現象があるから地震波が建物内で共振することが多く、共振は特定の周波数で振動が増幅される。二階やそれ以上の階に位置する部分は、特定の地震波の周波数と共振する可能性が高く、そのため一階よりも揺れが大きくなりやすい
建物に柔軟性があるから一般的に、建物の上階は下階よりも柔軟性が高く、より揺れやすい。下階は地盤に直接接しているため、地盤の堅固さによって揺れが緩和される。その一方、上階は建物全体の揺れによって影響を受けやすく揺れやすい。
構造の複雑性があるからロフトや吹き抜けがある場合は特に上階の構造が複雑になる。構造によっては地震の揺れを吸収しにくく、逆に揺れを増幅させる可能性がある

こうした理由から、地震は高層階のほうが感じやすいです。震度は低くても家具などが倒れやすいといこともあるので、注意が必要です。

2-2.1階だから安心というわけではない!

このように、建物は高層階のほうが揺れやすい傾向にあります。しかし「いつも1階で過ごしているから安心」というわけではありません。令和6年の元日に発生した能登半島地震では、死亡した方の9割が圧死という悲劇が起こりました。しかも1階にいて建物の下敷きになってしまった方も多く、あらためて建物の耐震性が見直されているのです。

2-3.日本の耐震基準は3つある

日本の耐震基準は1981年を境にした“旧耐震基準”と“新耐震基準”がありますが、近年では「2000年基準」と呼ばれる新たな耐震基準も知られています。

3つの耐震基準の違い

適用時期特徴
旧耐震基準1981年5月までに建てられた耐震性に乏しく震度6程度で倒壊するリスクが高い
新耐震基準1981年6月~2000年5月までに建てられた旧耐震基準より安全性は高いものの、2000年基準に比べると不安
2000年基準2000年6月~より建てられた基礎の形状や壁の配置バランスなども対策されており、大きな地震が来てもおおむね安心である

被害の大きかった能登畔沖地震や熊本地震では、旧耐震基準の建物の倒壊が多く、2000年基準での倒壊はほぼ見られませんでした。旧耐震基準の家や、長らく耐震診断をしていない家は適切にメンテナンスを行い、必要に応じて耐震補強リフォームを行ったほうが良いでしょう。

参照:新耐震基準はいつから?旧耐震と現行の耐震基準との違いは?| 住宅展示場のハウジングステージ (housingstage.jp)

3.今日からできる地震対策を紹介

大規模な震度やマグニチュードが襲ってきても安心できるよう、まずは家の耐震診断を行い、必要に応じて補強リフォームを行うことが重要です。

ただ、たとえ家が頑丈であっても普段の備蓄や地震に対する心構えは必要です。さっそく今日から少しずつでも良いので、地震への備えを行っていきましょう。

3-1.備蓄は何といってもトイレが重要

実際に大規模災害にあった人の多くは「簡易トイレ」の重要性を口にしています。地震対策には水を始めとした多くの備蓄が必要ですが、まずはトイレの準備を行いましょう。非常用トイレは多くのグッズが販売されていますが、新聞でも対策はできます。

新聞で出来るトイレ対策

ビニールと新聞で簡易トイレができる便座にビニールと新聞を設置して排泄をする。排泄後はそのままビニールに包んで捨てられる
吸水性を生かせる新聞紙は非常用トイレで尿を吸収するために使用できる。使用後のトイレットペーパーやその他の廃棄物を置いて、吸水性を活かして清潔を保てる
廃棄物の包装材としても役立つ使用済みのトイレットペーパーや廃棄物を包むことにも役立つ。ペットのし尿処理にも便利

3-2.自宅避難ができるようにしておく

大規模災害が起きると避難所が併設されますが、全員が避難所に入れるとは限りません。政府はむしろ自宅が倒壊していない場合は、基本的には自宅避難を推奨しています。

普段から自宅避難に向けて家に常備すべきものは以下の通りです。

  • 水(1人1日あたり3L)
  • 3日分程度の食料
  • 簡易トイレ
  • モバイルバッテリー
  • ラジオ
  • ランタン
  • 生理用品やコットン類
  • トイレットペーパー
  • 水のいらないシャンプーや歯磨きシート

水や食料はローリングストック(回転備蓄)という方法が適しています。例えばレトルトカレーは防災食として便利ですが、災害が起きない限り食べないという準備ではいつの間にか賞味期限が切れてしまいます。そのため普段から食べている水や食品を多めに購入し、日常で食べつつ必要な分だけ買い足すという方法が良いでしょう。

4.まとめ

震度とマグニチュードにはそれぞれ意味があり、基本的には数字が大きいほど地震の被害も大きい傾向があります。地震大国である日本は、いつどこで被害に遭ってもおかしくはありません。まずは日頃から防災に備えて簡易トイレや食料などの備蓄を行い、自宅避難ができるように備えましょう。

また、どれだけ備蓄があっても家自体の耐震性が低いとリスクは高まります。特に古い家に住んでいる人はまず耐震診断を受け、必要に応じて家の補強や家具の転倒を予防する措置を行いましょう。