戸建てに住む人の多くは「1階と2階の温度が違う」のを感じているでしょう。多くの場合、日当たりの良い2階は春や秋、冬は温かくて快適だけれど、熱気の溜まった夏の2階の暑さはたまりません。エアコンなしではとても眠れず、光熱費に悩まされる家庭も多いでしょう。
季節によって同じ家の中でも、1階と2階では心地よいと感じる部屋は違います。この記事では、1階と2階の部屋の温度の違いや、心地よく眠るための対策などについて詳しく紹介します。
1.1階2階の温度は違う
基本的に、1階と2階の温度は違います。特に夏の2階はとにかく暑く、日中は過ごすことができないといったお悩みも多いです。同じ敷地内にあるのに、なぜ1階と2階でここまで温度差が出るのでしょうか?
1-1.なぜ2階のほうが暑いのか?
1階と2階の温度差が生じるのは、建物の構造や自然条件によるものが原因です。下表は2階が暑くなってしまう理由について解説したものです。
階層ごとに熱伝導が違うから | 建物の床、壁、天井などは断熱材で仕切られているため、1階と2階の熱伝導が異なる。夏は外部からの熱をもろに受けてしまうため、どうしても2階の方が暖かくなりやすい。 |
屋根と太陽の影響 | 2階は通常、1階よりも屋根に近く、屋根が太陽の熱を吸収し、部屋を急速に暖める。また、窓や壁の配置により、日中に2階の部屋が太陽光をより多く受けるため、暑くなる |
空気の対流と通気性によるもの | 2階の部屋の通気性が悪い場合、熱がこもりやすくなり、暑さが蓄積されてしまう。 |
遮熱材や断熱材の不足 | 建物の遮熱材や断熱材が十分でないと、外部の気温変化が部屋内の温度に大きな影響を与える。特に2階の屋根裏空間の断熱が不足すると、部屋の温度が急激に上昇しやすい。 |
外部の気象条件 | 外部の気象条件も温度差に影響を与える。日照時間、湿度などが1階と2階で異なることがあり、温度差を拡大させる |
こうした要因から、一般的な戸建ての家は1階よりも2階のほうが暖かいです。温度差を緩和するためには、適切な断熱材の設置や遮熱材の利用がポイントです。
1-2.3階建ての部屋 階数ごとの温度の違い
戸建ての場合、1階よりも2階、2階より3階の部屋に上がるほど気温は上昇します。外の気温が30度の日に建築家が1階~3階の床の温度を調べたところ、次のような温度の差が出ました。
1階 | 27.4度 |
2階 | 28.5度 |
3階 | 32.5度 |
表を見ると、暑い日でも1階のほうが過ごしやすいのが分かります。特に3階の気温は外よりも暑く、1階との温度差は5度以上あるのが分かります。夏の暑い時期には下層階で過ごしたほうが快適で、エアコンの光熱費も抑えることができるでしょう。
2.1階と2階の温度の違いを利用した過ごし方
のように、戸建ての場合1階と2階では温度に差が生じ、特に夏場は2階で過ごすのがキツイです。こうしたことを踏まえると、季節に応じて過ごす部屋を変えてみるのも良いでしょう。
2-1.季節ごとに寝る場所を変えてみる
夏の暑い夜は、1階で寝てみるのもおすすめです。普段は2階の寝室で寝る人も、夏の間は1階に布団を運んで寝るといった計画を立ててみましょう。
季節ごとに寝る場所を変えるメリット
質の良い睡眠が取れる | 1階は通常、2階よりも涼しいため、夏は1階で寝るのがおすすめ。夜間に窓を開ければ自然の風を取り入れやすく、涼しい空気が1階の部屋に滞まるため、快適な睡眠が取れる |
光熱費の削減 | 1階で寝たほうが2階より涼しく、エアコンの使用を最小限に抑えられる |
安全性も高い | 1階の部屋は非常時に建物からの脱出が容易で、地震や火災などの安全面からもメリットがある |
これらのメリットから、夏場には1階で寝ることがおすすめです。2階より室温が低く、快適で静かな環境で眠れるため、夏にありがちな「暑苦しい夜からの開放」も期待できるでしょう。またエアコンの使用を最小限に抑えることで、省エネルギーにも貢献します。ただし、冬季には逆の状況となり、2階の部屋が快適な寝室になることも多いので、季節に応じて部屋の使い分けをしましょう。
2-2.冬は日当たりの良い2階のほうが快適
夏場は暑くて寝苦しい2階ですが、冬の時期は2階のほうが快適なケースが多いです。まず2階のほうが日光を効果的に取り入れられることが多いため、自然と室内温度を上昇させ、暖房の必要を減らすことができます。
また、暖められた空気は下から上に上昇します。特に吹き抜けのある家は1階で作られた熱が上昇しやすいため、2階は効率的な暖房効果があります。そのため冬は2階で寝たほうが快適な温度環境を維持でき、快眠もサポートできるでしょう。
近年質の良い睡眠が取れないと悩む人も多いです。季節ごとに寝室を変えるのは少々面倒なこともありますが、毎日の健康を維持するためにも季節に応じて寝室を変えてみてもいいでしょう。
3.1階と2階の温度差を減らす方法
このように快適な生活を送るためには、季節に応じて寝室を2階から1階に変えるといったことがおススメです。
しかしいちいち寝室を変えるのは面倒、という人もいるでしょう。ならばそもそも1階と2階の温度差をなくせばいいのではないでしょうか。
戸建てにおいて、完璧に1階と2階の温度差をなくすのは難しいです。しかしちょっとした工夫で温度差を縮めることはできます。ここからは、その具体的な方法を紹介します。
3-1.2階は風の通り道を意識する
夏の2階は窓を開けて新鮮な空気を取り入れ、室内の空気を循環させましょう。特に夜間や涼しい時間帯に窓を開けると、室内外の温度差をうまく利用できるため、部屋の冷却に効果的です。対角線上にある窓を開けるのを意識しましょう。
また、うまく風を入れられないときは、サーキュレーターや扇風機を活用しましょう。サーキュレーターを使えば2階に溜まった熱い空気を循環させ、熱気を分散させられます。
3-2.カーテンを厚手に、シェードで日よけを作る
日よけを利用して2階の室内温度を下げる方法もあります。まずは2階の窓には厚手のカーテンを取り付けましょう。厚いカーテンは冬場に温められた空気が室外に放出されるのを防ぐだけでなく、夏場でも効果を発揮します。厚みのあるカーテンが、直射日光を遮り、室内温度の上昇を抑えてくれます。また、ブラインドやシェードを使って日光を遮断しましょう。たった1枚のシェードを貼るだけでも室内の温度上昇を防ぎ、温度の上昇はもちろん家具や床の日焼けを防ぐ効果もあります。
3-3.ベランダに打ち水をする
ベランダに打ち水をすると、水が蒸発することで周囲の温度を下げます。なるべく床だけでなく、壁にも水を噴射しましょう。これにより、水がしっかりと2階のベランダや壁表面に付着し、蒸発による冷却効果を高めます。打ち水は通常、夏の暑い日に効果的です。特に日中の高温時に行うと、室内に熱気が入るのを防ぎ、部屋の温度を下げる効果もあります。
3-4.遮熱シートを貼る
外部からの熱を遮断するために、2階の窓ガラスに遮熱シートを貼るのもおすすめです。遮熱シートは日光を反射し、部屋内に熱を取り込ませない効果があります。これにより、2階の温度上昇を軽減できます。
また、本格的な遮熱シートを貼るリフォームを検討してもいいでしょう。リフォーム会社などに依頼し屋根裏などに遮熱シートを貼ってもらうと、部屋の温度が10度ほど下がるケースもあります。価格はシートの種類や業者によって異なるものの、内側から屋根裏に貼る場合は1㎡あたり5,000~7,000円、屋根の上に貼る場合は1㎡あたり15,000円~2,5000円程です。コストをかけてしっかり遮熱材を家に施したほうが、光熱費のランニングコストを抑えられます。
まとめ
1階と2階の温度差は、建物の構造、外部環境や熱伝導など複数の要因によって影響を受けます。そのため夏季には涼しい1階で寝ることがおすすめで、季節によって寝室を移動するのも検討してみましょう。
また、1階と2階の温度差を減らすには、次の対策が有効です。
• 夏の2階の部屋は風の通り道を意識する。
•厚手のカーテンを使い、ブラインドやシェードで日よけを作る。
• ベランダに打ち水を行い、周囲の温度を下げる。
• 窓に遮熱シートを貼るなど、外部からの熱を遮断する
これらのアプローチを組み合わせることで、1階と2階の温度差を最小限にし、快適な居住環境を実現できます。快適な睡眠を取りたい人は特に、季節に合わせた適切な寝室の選択と温度調整方法を取り入れていきましょう。