戸建ての新築住宅におけるデザインでは、天井の高い家が増えています。その証拠に、住宅メーカーのCMでは必ずと言っていいほど天井の高いリビングや玄関の吹き抜けが登場します。

圧迫感の少ない高い天井は誰もが憧れる空間です。しかし、高い天井は冷暖房が効きにくいといったデメリットもあり、そのデメリットを解消するには「家の気密性」がポイントになります。ここでは、これから天井の高い家を建てる人はもちろん、すでに天井の高い家で不便さを感じている人へのアドバイスも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

1.天井の高い家のメリット

ハウスメーカーによる戸建て住宅の天井の高さにおける競争が熾烈です。

昔の天井の高さは 220cm が主流でしたが、今では280cm、もしくは3mもの天井の高さをアピールするハウスメーカーが増えています。

なぜここまで天井の高さを推しているのか?それには、天井が高いことにより次のようなメリットがあるからです。

1-1.家の解放感がアップする

まず、天井が高いと視覚的な空間の広がりを感じられます。天井が遠くまで広がっている光景は、部屋全体を広々と感じさせます。心理的にも圧迫感が軽減され、気分的にも良くなるでしょう。たとえ土地の狭い狭小住宅であっても、天井が高いことで部屋全体が広く見える効果があります。

また、高い天井は建築デザインや内装のアレンジの幅も広げます。天井の高さに応じて、大きな窓や壁面にアートや装飾を配置することもできるでしょう。上部に空間があることで、豪華なシャンデリアやインテリアアイテムも手軽に取り入れられます。

1-2.風通しが良くなる

天井が高いと、室内における風の流れがスムーズになります。高い天井は空間を広く感じさせるだけでなく、上部に熱気や湿気がたまりにくくなるため、自然な風の流れが生まれやすくなります

また天井が高い家では、温かい空気が上に上昇し、冷たい空気が下に沈むという自然の対流効果が生まれます。暖房や冷房装置を使用している場合でも、高い天井によって暖かい空気や冷たい空気がより均等に広がり、室内の温度差を緩和します。とくにサーキュレーターなどを使うと効果的です。

このようなことから天井が高いと、湿気やニオイの蓄積も抑えることができます

1-3.採光効果の向上、照明や音響効果も上がる

天井が高いと、より自然光を取り入れられるうえ、照明効果、音響効果の向上にもつながります。

天井が低い家 天井が高い家
採光効果 限られた自然光の取り込みしかできない 多くの自然光を取り込めるため、部屋全体が明るくなる
照明効果 照明の範囲が制限される 取り付ける照明の選択肢が増え、光の範囲が広がる
音響効果 反響や残響が増えやすい 音が広がり拡散する。音響効果が高い

天井が高い家では、大きな窓や開口部を設けることができるため、より多くの自然光を室内に取り込むことができます。天井の高さによって光が広がり、室内全体が明るく照らされるため、採光効果が向上します。そのうえ照明器具を高い位置に設置することができるため、光が反射・拡散されて、室内全体をさらに明るくすることもできるでしょう。

また天井が高いと音響効果が向上します。これにより、音楽や映画鑑賞時には高い天井が臨場感も上げてくれるでしょう。

2.一方で天井が高いとデメリットもある

 

ただし、天井が高いことによって生まれる弊害もあります。以下は、天井が高いことで生まれる4つのデメリットです。

冷暖房効率の低下:

天井が高いと、室内の温度が上昇しやすくなる可能性があります。暖房や冷房の効果が天井の高さによって拡散されるため、効率が低下しやすいです。これを防ぐためには、シーリングファンやサーキュレーターを使う必要があります。

高いメンテナンスコスト:

天井が高い場合、天井や照明器具などのメンテナンスや修繕が難しくなります。高い場所へのアクセスや作業が困難であるため、メンテナンスコストや手間が増えるケースも多いです。

インテリアが下手だと殺伐とした印象になる

:天井が高いと、天井から床までの高さが増えます。家具や装飾品の配置を工夫しないと、上部の空間がなんだか殺伐とした印象に。効率的な空間利用が難しいと感じる人もいます。

照明の消費電力が上がる:

天井が高い場合、広い範囲を照らすために多くの照明器具が必要になるケースも。照明の消費電力が増加することで、電気代が上昇することも考えられます。

天井の高い家に住む場合は、上記のようなデメリットも考慮する必要があります。

3.天井の高い家にするには、家の気密性を上げることがポイント

 

天井の高い家が流行っている一方、高い天井は冷暖房の効き目が悪くなったり、照明の消費電力が上がったりするデメリットもあります。このような欠点を解消するには、家の気密性を高めることがポイントです。

これから天井の高い家を建てる人はもちろん、すでに天井の高い家で不便を感じている人も、ぜひ次の紹介する家の気密性を高める方法を実践しましょう。

3-1.樹脂製のサッシ、窓も気密性の高い製品にする

アルミサッシの場合は、ぜひ樹脂製サッシへの交換を検討しましょう。樹脂は金属よりも熱伝導率が低く、断熱性に優れています。そのため、樹脂製のサッシを使用することで、室内と外気の熱の移動を抑えることができます。さらに樹脂のサッシは、形状や色彩のバリエーションも豊富で、デザインの自由度が高いです。

また、窓も昔ながらの1枚だけのものではなく、複合ガラスや断熱ガラスがおすすめです。気密性の高い窓を選ぶことで、外気の侵入や室内空気の漏れを抑えることができます。これにより、天井の高い家でも冷暖房効果が向上し、エネルギーの節約にもつながります。

3-2.玄関ドアは片開きのほうが気密性は高い

片開きの玄関ドアのほうが、開閉時には一つのドアパネルがしっかりと閉まります。このため、開け閉めの際に外気や風が侵入しにくく、気密性が保たれます。その一方、両開きのドアでは、二つのドアパネルが開かれるため、開閉時に一時的に気密性が低下します。両開きのドアは車いすが通りやすいなど、バリアフリーの観点からメリットが高いです。しかし気密性の観点からいうとデメリットがあることを覚えておきましょう。

3-3.縦すべり窓や滑り出し窓を検討する

 

家の断熱性が劣る原因の多くは窓です。そのため近年では断熱性を上げるため「縦すべり窓」や「滑り出し窓」が増えています。

この窓は、窓の軸がスライドし、左右どちらか一方に回転する窓です。一般的な窓とは違い、スライドして開けることは基本的にできませんが、閉めた時の気密性が高いのが特徴です。部屋の明るさをアップしたいときには、縦すべり窓を同じ壁面に複数設置することも可能です。近年では気密性を重視した窓がどんどん開発されているので、ショールームなどに足を運んでみても良いでしょう。

3-4.高気密住宅にリフォームする

古い家の中には天井が高いのに、気密性が悪くて冬はとても寒いケースもあります。そのような家は、高気密住宅へのリフォームも検討しましょう。

家全体を高気密にリフォームするのは難しくても、せめて壁だけ、床だけといった施工でもある程度の効果はあります。以下は、高気密住宅にリフォームする際の大まかな価格と日程です。

費用の相場 工期
壁の断熱リフォーム 1万円~ / m2 2週間~
天井の断熱リフォーム 5,000 / m2 2日~
床の断熱リフォーム 5,000 / m2 2日~

費用や後期はあくまで目安であり、家の広さや施工内容によって異なります。例として、約60100平方メートルの屋根裏に断熱材を敷くリフォームの場合、は約15万円~30万円の費用が掛かることが多いです。

ただしコストをかけて高気密住宅にすれば、高い天井でも気温変化の影響を受けにくくなり、室内の気温を一定に保つことができます。冬でもトイレや浴室、玄関などの空間も温かく、建物内の気温差も少なくなるでしょう。ヒートショックのリスクも減ることから、健康面でもメリットがあります。

まとめ 天井の高い家は気密性が大きく関連している

 

天井の高い家は、さまざまなメリットをもたらします。高い天井は、空間の解放感や明るさを生み出し、心理的な快適さを提供します。また、天井の高さによって風通しも良くなり、室内の空気の循環が促進されるでしょう

しかしその一方でデメリットもあり、高い天井による熱の上昇や保温性の低下、インテリアの調和の難しさなどが挙げられます。

天井の高さを活かすためには、気密性が重要な要素です。気密性の高い二重窓や縦すべり窓の設置、樹脂製のサッシを導入したり、家全体を気密性の高いリフォームにする必要もあるでしょう。

天井の高い家は、快適な生活空間を提供する一方で、エネルギー効率や調湿性にも配慮する必要があります。これから天井の高い家を検討している人は、ハウスメーカーのいうメリットばかりを鵜呑みにせず、注意点も見越したうえで慎重に検討しましょう。